四国の旅16日目となる11月1日、
いよいよ佐田岬へ向かいます。
日本一細長いといわれる半島の突端であり、
四国最西端です。
伊方市街〜三崎港までは佐田岬メロディー道路こと
国道197号をシンプルに進み、
その先は県道や農道です。
当初は国道を避けて小さな漁港をつなぐつもりでしたが、
それだと距離140km近くになるため、
往復とも国道を利用して距離98kmほどとしました。
Ride With GPSでコースを引くときは
楽観的で強気ですが、現地では「そんなに走れねーよ」と
弱気というか堅実な選択をすることも多くなり、
理想と現実が乖離することが増えてきました。
佐田岬半島は5年ほど前にも走ったことがあり、
けっこうアップダウンが多かった記憶があるのも
最短経路にした理由のひとつです。
6時、空が少しずつ明るくなってきました。
四国の西側にいると、日の出が山にさえぎられ、
明るくなるのがゆっくりです。
補給食とお守りを入れたコックピットパック(トップチューブバッグ)以外のバッグをすべて外しました。レインジャケットはウェアのバックポケットに入れ、完全に日帰り快走モードで出発。伊方市街のローソンで軽い朝食を済ませ、国道に上ります。国道は尾根筋に伸びているので、まずは標高200mくらいまでアップ。トンネルが現れるたびに小さなアップダウンを繰り返しながら進んでいきます。トンネルが多いだけに上り量はさほどでもないのですが、あらためて走ってみると岬への往路はトンネルの多くが上り基調となり、抜けるのに時間がかかって、けっこう気をつかいます。伊方きらら館という道の駅。まだ8時前で入館できませんでした。ここでクロスバイクに乗られた方に追いつくと「お兄さん強いねー」なんて声をかけられましたが、まったく強くありません(汗)。レネゲードC2という、自分史上もっとも快適な自転車に乗っているにも関わらず、早くも疲労を感じつつあります。長い国道197号は佐田岬メロディー道路と呼ばれ、二箇所ほど音楽を奏でる区間があります。路面に計算された溝が掘られており、クルマの走行音がメロディーになるのです。沿道に民家がほとんどなく、半ば観光道路のような道筋だから可能な仕掛けでしょう。ただし、自転車では鳴りません。行き交う自転車が奏でるのを聞くのみです。淡々と30kmほど走ると三崎港。佐賀関からの国道九四フェリーが就航している港町です。「佐田岬はなはな」という大掛かりな観光施設が誕生していました。しかし、三崎の入り口にある馴染みの(?)ローソンで補給したばかりだったので、特に中には入らず先へ進みました。三崎で国道はとぎれ、ぐっと細くなる県道で佐田岬へ向かいます。三崎港へ進む九四フェリーが遠望できました。
以前の佐田岬訪問では、これを利用して九州から三崎に上陸したので、わずかな往復区間だけで佐田岬に至ることができました。今回のようにガッツリ往復するのは、あんまり賢くないような気もします(汗)。三崎の周辺にもキャンプ場があるのですが、
事前に電話したところ閉鎖中とのことで、それも室鼻公園を利用した理由です。三崎から先の県道もアップダウンは多いのですが、メロディーラインのように直線的な造りではないので、個人的には走りやすく感じます。景色の変化にも富むので好印象です。クルマやオートバイだと、メロディーラインのようにガーッと飛ばせる道が好都合なのかもしれませんが、自転車はくねくねした細道のほうが楽しいです。佐田岬が見えてきました。クルマやオートバイは岬から1.8kmほど手前の駐車場までしか進めませんが、自転車なら奥まで進んでいくことができます。遊歩道ですが舗装されているので、乗車できる区間がほとんどです。ただし、鋭角的なカーブが多く、歩いてる方も少なくないので、無理せずに押し歩いたほうがよいでしょう。灯台の手前には開けたスペースがあり、小さな堤防もあります。昔はここにキャンプ場があったらしいです。ついに佐田岬に到着。
九州が目の前。これで四国最西端にも立ち寄ったことにもなりました。その小さな自己満足のために一日を費やすわけです。展望台に設置されていた「愛のモニュメント ラブリング」。こういうのを絶景の地に設ける感覚が自分には理解できません。仮にパートナーと訪れたとしても(そんなこと自分には金輪際ありませんが)なんか照れくさいだけのような気がします。豊後水道に突き出した佐田岬は海防上の要地でもあり、旧軍が作った探照灯の格納庫などが残っています。呉から出撃した連合艦隊を見守ったことでしょう。佐田岬の沖合を往復していたUS-2。望遠レンズがないのでちっこいですが、日本が誇る飛行艇を見ることができて得した気分。愛のモニュメントには何も共感できない自分ですが、
史跡とか軍用機には心がくすぐられます。佐田岬からの復路は、わずかな距離ですが農免農道へ。風車が林立してます。ようやく紅葉もはじまってきたようです。初見では絶対に読めない地名、「よぼこり」。伊豆もそうですが、半島には難読地名が多いです。復路は多少走りやすくなるメロディーラインを淡々と進み、伊方の道の駅に戻ってきました。館内には「サイクルオアシス」なるスペースがあって、サイクルウェアとロードバイク、パンフレットなどが置いてありました。展望デッキに出ると、伊方原発がちらりと見えました。原子炉が3基あって、すべて停止中。そのうち2基は廃止措置に入っており、40年かけて解体するとか。一度でも原発ができた町は、末長く原発の町です……。道の駅の裏手に原発の資料館もあるのでちょっと覗いてみたかったですが、すでに16時近かったので、キャンプ地をめざしました。メロディーラインを挟んで対岸にある伊方の町に戻ってきました。スーパーに立ち寄ってから、キャンプ地へ。軽装でも十分に走りごたえがありました。荷物を下ろすと、しばらくは圧倒的な軽快感がうれしいものです。それに浮かれて脚を使いすぎるのは要注意ですが、ここぞというタイミングで連泊して周回もしくは往復コースを設定するのはなかなか賢い選択だと自画自賛するのでした。さっきはフェリーのほうが……とか書いてて、我ながら矛盾してます(汗)。八幡浜のおでんを買ってきました。やはり牛すじは追加したいところ。汁が同梱されてませんでしたが、手持ちの「鍋キューブ」で煮込み、おいしくいただきました。
四国一周において、もっとも手強いといえる佐田岬を往復しましたので、この日は深い安堵に包まれました。フロントのインナーギヤを使うのも
今日が最後でしょう。それくらい、この先の海沿いルートは平坦が続きます。何度も訪れたエリアなので、土地勘もあります。
と、安堵しつつも、また大変なことをやらかさないよう自重して行動しなければなりません。走行中はもちろんですが、キャンプや釣りの最中もこぼさない、倒さない、溶かさない、折らない、転ばない……一挙手一投足に気を配るんだぞ、と自分に言い聞かせた夜でした。
続く。