こんにちは、田村です。
昨年に購入した14インチ小径車、ダホンK3。
軽くて小さくなる折りたたみ自転車であり、
気軽なサイクリングに最適なモデルです。
輪行が気負いなくできるのも魅力。
当然ながら、ロングライドとか重装備のキャンプとかには
本質的に向いてません。
モノには向き不向きがあるのが道理です。
しかし、僕のサイクリング仲間であり
京都在住の先輩が、
「14インチでビワイチすれば変態の仲間入りや」
などと言い出しました。
「ビワイチ」とは言うまでもなく琵琶湖一周のことで、
その距離は185km前後とするのが一般的です。
数年前にロードバイクでビワイチしましたが、
14インチで走れるものなのだろうか……。
先輩氏の14インチ車は、K3そっくりで
ダホンOEMのキャプテンスタッグ・リライトというモデル。
シングルスピードなのですが、
怪しい中華パーツで3速化したり、ギヤ比を変えたり、
あれこれいぢりだして、しまいには
「ビワ練」などと呼称して、
毎週のように琵琶湖を100kmくらい
走ってる様子……どうやら本気だと気付いたので、
僕も対策を考えることにしました。
己のK3と脚力を見極めるべく、
せっせと岩槻まで走ること数度。
岩槻は自分が住む池袋から距離40〜50kmにある城下町で、
行程の大半をサイクリングロードで組むことができます。
荒川〜芝川〜見沼の各河川を結べば、
クルマを気にせずに走ることができ、地形も平坦。
京都の先輩と違って琵琶湖で練習などできませんから、
岩槻を目標として、平坦メインのロングライドに
慣れておこうと思った次第です。
あと、最近始まった推しのアニメで
岩槻が描かれているのも動機だったりします(笑)。
日光御成道の宿場としても栄えた岩槻。
時の鐘があったりして、地味な川越、といった風情。太田資正という戦国武将が活躍した地としても(一部で)有名です。本来、「歩くより速ければOK」くらいのつもりで
局地サイクリング用に導入したK3ですが、
ある程度でもまとまった距離を走ってみると、
いろいろと気になってきます。
まず、53×9Tのトップギアが
自分の限られた脚力には重くて踏みづらいのです。
重けりゃ使わなきゃいいや〜と思ってましたが、
ビワイチとなると
貴重なトップが
使えないようでは話になりません。
フラットハンドルなので、乗車姿勢が
限られるのもウイークポイント。
しかし、これをドロップなどに変えたら
あまりに大人気ないので、
サドルの位置を念入りに調整し、
少しでも疲れにくいポジションを模索。
しかし、自分で考えてるだけでは
氏の魔改造に及ぶべくもないので、
プロの力をお借りすることにしました。
とある週末、池袋〜岩槻〜佐野〜小山と115kmほどを自走して、
K3の購入店であるオレンヂジュースさんを訪ねました。
小径車にめっぽう強いショップさんです。
同店の店長に「なりゆきでビワイチすることになって……」と
半ば泣きつき、チューンナップをお願いしました。
チェーンリングを53Tから48Tに交換してもらいました。
これで、リアのトップ9Tがだいぶ踏みやすくなりました。
昨今の部品不足の中、用立てていただき
感謝の念にたえません。
K3およびリライト用3速カセットは、
トップ9Tがロックリングを兼ねてて交換不可なので、
チェーンリングを小さくするしかないんです。
そのままでは2段目が軽くなりすぎるので
13Tから12Tへ変更。これでトップとの差が広がらず、
平坦路で有用なクロスレシオ(とはほどとおいですが)に
近づかせました。
ローギアは軽くなるほど助かるシーンが多いので、
オリジナルの17Tのままとしました。
店長の提案によって、
タイヤを標準のケンダからトレンクル用の
パナレーサーに交換。これは自分では思いもよらず、
さすがはプロだとうなりました。
(在庫してるのもすごい)
ZSGコンパウンドによる現代的なグリップ感と
しなやかさが魅力で、だいぶ乗り味が向上しました。
TOGS(トグス)というアシストバーを追加。
これも店長のご提案で、京都の先輩も同様の
バーを導入されてました。
グリップとブレーキレバーの間に取り付け、
親指をひっかけます。
グリップの中央寄りを握った時の安定感が高まるので、
脇を締めた姿勢がとりやすくなります。
乗車ポジションが限られるという
フラットハンドルの弱点をカバーする
ニッチなアイテムです。
こうして、近年まれにみるほど
入念にチューンナップしました。
人事を尽くして天命を待つ、といった
気分です。
こうして来るべきビワイチに備えたのですが、
言うまでもなく東京から滋賀県はかなり遠く、
けっこうな交通費を要します。
ビワイチだけで遠征するのももったいなく思えたので、
プラスαの計画を盛ることにしました。
滋賀県まで足を伸ばせば、
小豆島がそれなりに近いです。
なぜ突然に小豆島? と思われそうですが、
これもアニメの影響で、「からかい上手の高木さん」という
作品の舞台が小豆島なのです。
「二十四の瞳」の舞台としても有名ですが、
僕は訪れたことがなく、いつか機会あれば……と
思っていたのです。
JR琵琶湖線には姫路行きの快速列車が
頻繁に走ってるので、それに乗って姫路から
小豆島行きのフェリーに乗ろう、と思いました。
成功するかどうかおぼつかないビワイチだけでは
不安で胸がつぶれそうですが、小豆島は
逃げも隠れもしません。訪れれば必ず楽しめそうです。
ビワイチのためにビジネスホテルを取りましたが、
小豆島ではキャンプで夜を過ごすべく、
準備を進めました。
キャンプ道具を選抜し、
35リットルのドライバッグにおさめて
K3に付けたヴァリオラック(の、ターンOEM版)に
どかっと搭載。
もちろん、ビワイチの時には
キャリアごと外します。
バックパックには釣り道具を満載。もはや何をしたい旅なのか支離滅裂になってきましたが、
遊びのネタは多いほうがいいじゃないですか。
そして3月11日の夕刻に
大津のホテルα-1にチェックイン。
控えめにビールを飲んで
とっとと寝に着きました。
迎えた運命の12日。
朝6時前に大津駅で待つことしばし……。
京都の先輩がご到着。
ここに2台の14インチ車が揃いました。
いい歳したオッサンがなにやってんだか……。
いよいよビワイチのはじまりです。
幸いにも風は弱く、気温も高めで
走行環境としては申し分ない天候に恵まれました。
あとはせっせと走るのみ。
守山に登場した新しいモニュメント。
でっかいBIWAKOに小さな自転車が
ミスマッチで笑えます。
琵琶湖は、湖北を除けば基本的に街が多く
人家が途切れたりしません。コンビニがいい間隔で
現れるのも助かります。サイクリストも多いです。
田舎っぽくなる湖北では、道の駅で近江牛バーガーをいただきました。なかなか美味。
賎ヶ岳にはまだ雪が残ってました。
風情のあるトンネルが次々と現れ、
ツーリング的には湖北がハイライトです。
山には雪が残りながら、
春らしい霞に包まれた奥琵琶湖。
一昨年は、このあたりでハンモックを破いたり
お財布を落としたりと散々だったことを思い出しました。
その時、仕事中にもかかわらず駆けつけてくれたのも
京都の先輩でした。
こうして二人でビワイチするのは
運命だったのかもしれません(笑)。
なにはともあれ、マイペースで
進んでいきます。
事前の悲観的観測では
15時間ちかくかかるのではと危惧してましたが、
湖北までグロス平均速度18kmを維持しており、
上々のペースです。
やはり、二人で走ると張り合いがあります。
TOGSポジションはかなり快適。
下りと変速時以外は
大半がTOGSポジションとなりました。
基本的に走りやすい道が続くビワイチですが、
湖西まで至ると飽きてきます。
「飽きますね〜」と訴えると、
「とっくに飽きてるに決まってるやん」と先輩。
地元ですから、なおさらでしょう……。
コーラ飲みつつSNSでつぶやく先輩。
大津が近づくほど、ロングライドらしい
哀愁が漂いだしました。
所要11時間、なんと17時過ぎには大津に戻ってきました。
暗くなることを覚悟していただけに、
望外の好ペースでの完走に心底ほっとしました。
ありがとう琵琶湖、ありがとうK3、
ありがとうございます先輩。
「もうしばらくミニはええわ」とつぶやいた先輩でしたが、
翌13日、朝5時過ぎには大津駅に再び参上。
今度はひとりで輪行モード。
9時前には姫路港に到着。
鉄道の姫路駅はリニューアルが進んでましたが、
港のターミナルは古いままです。