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シクロツーリスト&ランドヌールときどき模型の製作日記
cyclo.exblog.jp
自転車と旅が好きな人へ発信する季刊誌『シクロツーリスト』と『ランドヌール』の製作日記です。書いているのは編集・田村です。ご意見ご感想は、tamura_hiroshi@me.comまでお願いします(@は半角に)。
by cyclotourist
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対馬で自転車キャンプ×釣り 3/3
こんにちは、田村です。
イカを釣るために訪れた対馬で、
初日に狙いどおりのアオリイカが釣れるという
望外の幸運に恵まれた私。
荒みがちだった心にも、すっかりゆとりが生まれました。
もう何もがっつかなくていいわけですし、
自然体で対馬を楽しもうと思います。
11月27日、対馬二日目は、
三宇田を起終点とする時計回りの周回コースを
走りました。対馬の最北部を小さく回る、
距離30kmほどのコースです。
三宇田のキャンプ場に連泊するので、
キャンプ道具など置いたまま、軽装で出発できます。
前日、重装備で100km走り、
この日は軽装で30kmだけ。
本来なら逆にしたいところですが、仕方ないでしょう。
キャンプ場を出てすぐ、殿崎という
小さな半島の付け根に、
日本海海戦(対馬沖海戦)の記念碑があります。
連合艦隊の司令長官だった東郷提督が、
敗軍の将を見舞う有名なシーンがレリーフになってます。
勝った戦には余裕が感じられます。
これが先の大戦になると、
心あたたまるエピソードは皆無ではないでしょうか。
戦争なんてしないに越したことはない、でも、
やるからには勝たないとダメだと思いました。
殿崎には周回できる遊歩道が伸びていて、
軽装のグラベルバイクなら進むことができました。
周辺には、沈む艦艇から逃れた
ロシア兵が上陸したという地点もあり、
本当に対馬のすぐ沖で大海戦があったんだなあと
実感させられます。
車道に戻って進んでいくと、
すぐに西泊。昨夕、イカを釣らせてくれた漁港です。
対馬では至る所に鳥居を見かけます。
西泊の小さな神社では「神石」を祀ってました。
蒙古襲来時に、山腹から石が飛び出して
蒙古の軍船を打ち砕いたとか。
小さな漁村が点在する対馬では、
写真のような高床の倉庫をよく見かけます。
まるで江戸時代そのままのような風情。
最北端に位置する豊の集落を抜けると、
岩をうがった洞窟のような史跡に至ります。
昭和9年に完成したという豊砲台です。
まったく無人なのですが……
地下の遺構が往時そのままに残っており
(さすがに機械類はないです)
ダンジョンと呼びたいような威容を見せてくれます。
据えられた砲を動かすための、
機械室や資材を収めたスペース。
奥へ進んでいくと、突き当りが
巨大な吹き抜けになっています。
ここに40cm砲塔が据えられていたそうです。
空母に改装された「赤城」用の砲塔とも
未成戦艦「土佐」用の砲塔ともいわれており、
対馬海峡をにらんでいたのでした。
実戦で発砲することはなかったそうですが、
この豊砲台のおかげで、
日本海側の被害が少なかったのかもしれません。
地上に出て、しばらく遊歩道を進むと、
砲台を俯瞰できました。
径も深さも10mはあるでしょう。
40cm砲塔がいかに巨大だったか如実に物語ってます。
それを離島の小さな半島に
据えたことにも驚きますが、
こんな砲塔を4基も積んで海上を進む
戦艦「長門」「陸奥」が
存在していたことにも驚きます。
「大和」「武蔵」はもっと……。
豊の入江。何事もなかったかのように静かです。
昨日、キャンプ場の管理人さんに教えてもらった
泉の堤防にも足を運びました。
小魚が群れていて、いかにもイカがいそう。
そこで1時間ほど竿を振ってみましたが、釣果なし。
やはり真昼間は釣れないのかもしれません……。
しかし、この日もイカを食べたい気持ちは抑えられず、
昨日の実績がある西泊の堤防を再訪。
まだ15時過ぎでしたので、「夕まずめ」には
ほど遠い明るさ。時期尚早だとは思いましたが、
せっかくなので竿を振るいます。
釣れました!
昨日よりひと周り小型ですが、
これで夕食が豊かになると思うと
うれしくてなりません。
エギはブルー。何色でも釣れるのかもしれません(笑)。
口に入りそうもない大きなエギに
抱きついてくるので、イカは相当に強気ですね。
ちなみに、昨日もこの日も、
堤防の漁港側で釣れました。
流れがない奥まったところに集まるのでしょうか。
キャンプ場に戻ったら、
昨晩と同じようにさばいてイカ刺しに。
ちょっと量が少なめですが、味は抜群。
ゲソ、鶏、ナス、サツマイモで唐揚げ祭。
こうして、対馬二日目の夜も
心身ともに満たされました。
11月28日、対馬三日目は、
上対馬の東岸を南下して、仁位へ。
事前の予定では、もっと南にある
あそうベイパークというキャンプ場を狙ってましたが、
周辺に商店などがなさすぎることが分かったので、
仁位にある神話の里という公園の
キャンプ場をめざすことにしました。
三宇田〜仁位で走行距離は70kmほど。
走り出すと、ほどなくして
舟志湾に差し掛かります。
典型的なリアス式海岸で、地形が入り組みすぎて
海が湖に見えるほど。
地元のパンフレットに、この舟志湾も
釣りのスポットだと紹介されていたので、
激坂にめげず奥へ進んでみます。
「オメガ塔」のモニュメントが建つ
公園に至りました。
GPSが普及する前は、オメガ航法なるもので
船舶や航空機が測位していたそうで、
そのための電波塔がここにあったそうです。
平成9年に閉局したそうですが、往時は
高さ455mの電波塔があったとか。
東京スカイツリーに記録を抜かれるまでは、
日本一高い塔だったそうです。
このオメガ塔跡の足元に、
素晴らしい親水歩道が伸びていました。
堤防かつ磯であるという、いかにも釣れそうで
ワクワクさせるスポット。
先客がお一人いて、長い竿を4本もセットしてました。
聞けばタイを狙っているそうですが、
「なんも釣れない」とのこと……。
とはいえ、見過ごすにはあまりに魅力的なスポットです。
まだお昼前でしたが、モノは試しで竿を振ってみます。
5投目くらいで釣れました!
20cm少々の小ぶりなアオリイカですが、
自分が選んだポイントで釣れたのが嬉しい限り。
また、かなり浅瀬で抱きついてきたので、
イカがエギの動きに気づいて
シューっと追ってくる様子も
じかに見ることができました。
しゃくり、大事ですね。
ここで粘って戦果を拡張したいところでしたが、
この日は先も長いので(予定よりは短縮してますが)、
この一杯をタッパーに収めたら、
サイクリングを再開しました。
もみじ街道。いったん漁村を離れると、
どこまでも山深く、坂ばかりの道が続くのは
国道の西岸も、県道の東岸も同じでした。
上っては下り、上っては下り……。
仁位の和多都美神社に着く頃には15時を回りました。
海中に鳥居が建つ海の神様です。
今日のキャンプ場は、この有名な神社のとなり。
神話の里キャンプ場。
非常に高規格で、サイトごとに電源まであります。
それでいて料金は1500円と十分にリーズナブル。
しかも、土曜日なのに貸切。
だから冬のキャンプは最高なのですよ。
テントサイトは海沿いにあり、
プライベート堤防まであります(笑)。
ただ、かなり水深が浅かったので、釣りは見送りました。
もう釣れてるしな!
イカリングがいいんじゃなイカ? という
メッセージがあり、素直にそのとおりに。
身を開かないでさばくのは少々難しかったですが、
自分の中では100点満点の
イカリングができました。
これも、うめ〜ですの。
11月29日、対馬四日目。
当初の予定では
あそうベイパークを起終点として、
下図のように下対馬を一周するコースを考えてました。
これで距離110km。連泊のメリットを活かし、
軽装で走れることを加味したプランでしたが、
対馬の坂っぷりを身をもって味わうと、
これすら机上の楽観論でした。
そのうえ……
キャンプ場を北寄りの
仁位にある神話の里に変更したことで、
下対馬一周を敢行すると、
距離が140kmほどにも伸びます。
完全に無理ゲーだと悟りました。
ナイトランをすればいくらでも航続距離は伸びますが、
それではキャンプの意味が薄れますし、
できれば釣りの時間も確保したい……。
とはいえ、元寇で蒙古軍が上陸したという
小茂田の浜は訪れてみたい……。
こうしたジレンマを解消すべく、
つらつらテントのなかで考えたのが、
上図のオレンジプラン。
仁位から空港直下の長板浦まで、
渡海船が運航してます(現地で知った)。
これを利用することで、初日にも走った道を割愛しつつ、
小茂田からは下対馬の中央部へショートカットして
キャンプ場へ戻ることにしました。
上下対馬を一周できないのは心残りですが、
海上の旅も楽しそうですし、
むやみに一周にこだわってしんどい想いを
するのはヤダなあ……と、
要は、旅も四日目になると疲れてるんですね(汗)。
イカが釣れて満足もしてますし。
ひとつ問題は、渡海船が週末は一往復のみで、
仁位の出航が7時のみと異様に早いこと……。
早起きすればいいだけです。
自転車がそのまま積んでもらえるか分からなかったので、
念のために輪行袋持参で6時半には
仁位の桟橋に着きました。
船こそ停泊してるものの、無人で真っ暗……。
ほどなくして、2名の船員さんが到着し、
船に乗り組んでエンジン始動、灯りがともりました。
「自転車? いいよ」とのことで、
輪行袋を使わずに乗せてくれました。
仁位〜長板浦で所用1時間半。料金は970円。
距離に比して所要時間がかなり長いですが、
津々浦々に寄港していくのです。
自転車はそのまま船室に。
乗客は自分ひとりだけでした。
7時という出航時刻は、通学や通勤、そして通院を
考慮した設定とのこと。ただ、道路が整備された今では
当然ながらクルマを利用する人ばかりで、
自分のように通勤でもなく、
団体観光(それ用に運航することもあるようです)でもなく、
ソロで利用する人は
「1年に10人くらい」とのこと……。
やや先行きが心配な渡海船ですが、市営ということもあり
存続しているようです。
出航してほどなく夜明け。
すばらしい光景です。乗ってよかった。
乗客が自分ひとりだったせいか、
自分よりひと回りくらい年長と思われる船員さんが、
親切に話しかけてくれます。
あれは真珠の養殖筏、あれはマグロの養殖、
向こうに見えるのは金田城……。
あそこは竹敷で海軍の基地があって……。
40年ほど前までは、本当に道が不便で
登山のような道で通学したこと、
それが実に急坂で前をいく女学生の
スカートの中が見えそうなこと(汗)、
転ぶと泥だらけになること……などなど、
地元の方ならではのお話をうかがうことができ、
実に有意義な船旅となりました。
長板浦に着く頃には、すっかり明るくなりました。
帰りも乗らせていただくかも、と挨拶し、下船。
復路は15:50なので、間に合わせたい。
この桟橋にも墨跡がたくさんあり、
見過ごすのも惜しいので30分ほど竿を振ってみましたが、
釣果ゼロ。ここは空港のすぐ下で
アクセスもいいことから、何名も釣り人がいました。
走り出し、ほどなくして国道をそれて県道へ。
金田城がある山塊が見えてきました。峻険です。
石積みが残ってるそうで見たかったですが、
サイクリングの片手間に登るのは
あきらめたくなる山容です(あきらめた)。
小茂田を目指して淡々と走ります。
下対馬の西岸はリアス度が低まる箇所が増え、
無限の外洋が望めました。
ちょうどお昼頃、小茂田の浜に到着。
白砂が伸びる美しい海岸です。
ここで凄絶な戦いがあったとは思えないほどですが、
元寇当時の浜は、もっと内陸だったそうです。
小茂田濱神社と、宗助国の騎馬像。
この像は、銘によると今年建立されたばかり。
篤志家が私財で建立、寄進したそうです。
対馬の地頭だった宗助国は、蒙古襲来時に
68歳の老将だったそうですが、
2万5000とも3万ともいわれる来襲蒙古軍に、
わずか80騎(総勢400)で立ち向かい、
全員が散華した……と、現地の案内板にあります。
桁がふたつも違う敵に対して、
果敢に挑んだ悲壮な勇気に心打たれると同時に、
なぜ? とも考えさせられました。
まったく素人考えですが、
水際迎撃しないで金田の城にこもるとか、
ほかに方策があったようにも思えますが、
そうしないところに、理由を感じさせます。
桶狭間のような奇策を狙ったのか、
全滅承知で、民を逃す時間を稼いだのか、
のちに続くであろう武士の範たらんとしたのか……。
元寇は、最終的に博多で撃退したものの、
対馬の惨状がいかばかりだったかと思うと、
「国境の島」であることが
尊くも切なく感じられました。
小茂田から県道で厳原へ抜けました。
途中で林道のような山深い道に迷い込んでしまい、
標高300mくらいまでアップ。
もしかしたら、対馬の車道でいちばん
標高がある道だったかもしれません……。
復路の渡海船に乗船。
途中、浅茅湾をやや出て外洋が近い海域では、
かなり波が立って船が揺れました。
仁位が近く頃に夕暮れ。
せつなくなるような夕映えに見入っていると……
「せっかく東京から来たんだから」と
船長さんのご好意で、
和多都美神社の鳥居に船を寄せてくれました。
いくら他に乗客がいないとはいえ、むしろいないからこそ、
自分ひとりへのサービスに涙ぐみました。
厚くお礼を伝えて下船しましたが、
如才ないワタクシは、
このあたりでイカ釣れますか? と
船員さんに聞きました。
すると、
「どこでも釣れるけん。ここも釣れる。潮もいい」
とのこと。
下船、即、釣り(笑)。
時刻は17時半過ぎ。釣れそうな頃合いです。
この桟橋には街灯があって、
暮れてきても手元が見やすいのが幸いです。
夕暮れとともに冷え込んできて、
ダウンジャケットを来た上に、上下とも
レインウェアを着込んで竿を振ることしばし……。
またエギの根がかりを思わせる強い反応あり。
これで4回目ですから動じません……と思いきや、
異様に竿が重い! おそるおそる
リールを巻いていくと……
デカいのキター。竿がU字型にしなって、
あげるまで折れるんじゃないかと思ったほど。
しかも、アオリイカじゃない。
ボリューミーなコウイカです。
キャンプ場でさばきます。
でっぷりとデカいです。
持ち慣れたビール500ml缶より優に重く、
600〜700gくらいはありそう。
そして墨が多いこと多いこと。
文字どおり硬質なコウを取り出し、
さばいていきます。
身もゲソもたっぷり。
ひとりで食べるのが申し訳ないほど
たっぷりのイカ刺しに(ぺろっと食べましたけど)。
アオリイカより少しコシが強く、
淡白な味わい。甲乙つけががたい美味さです。
コウイカはゲソが太く、
唐揚げの食べ応えも十分すぎるほど。
一杯のイカで満ち足りる夕食でした。
こうして、対馬では一日一杯のイカを
釣り上げることができ、毎晩夢のような
キャンプを楽しむことができました。
翌日は、厳原まで足を伸ばしてから空港へ。
さっと史跡巡りするだけで、竿も降らずに
家路についたのでした。
釣りは本当に楽しいです。
そして、望む釣果が得られると
まさに天にも上る気持ちです。
そう思えた大きな要素は、
やはり自分の一番の趣味である、
自転車で走って、自転車に積んできた道具で
キャンプして、釣りをしたからだな〜と
噛み締めてます。
釣りを始めて行きたいところがさらに増え、
そこを自転車で走り、釣りもする……。
趣味のマリアージュといいましょうか(汗)、
幸せな体験ができた
対馬の旅でした。
たぶんまた訪れるだろうなあ。
そのために下対馬を残したんだから(笑)。
by
cyclotourist
|
2020-12-03 22:43
|
Comments(
2
)
Commented by
白神ライン自転車情報希望
at 2020-12-05 21:14
削除
こんばんは、失礼いたします。ブログと的外れな質問になりますが、他の連絡先がわからず記入させていただくきますが、お許し願います。
シクロツーリスト7号で白神ラインを自転車で走る記事があり、自分も走行してみたいと思っています。そこで、この記事の人が使用した自転車(車種、商品名)や、スペック(特にタイヤサイズ、タイヤのタイプ)等について教えていただけないでしょうか?または、教えていただくには、どちらに聞いたら良いでしょうか?
グラフィック社のサイトを見ましたが、そういう質問をする雰囲気ではないと思い、失礼ながらこちらで質問させていただきました。
余計なコメントでしたら解決しだい削除しますので、その旨お知らせください。恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。
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1
Commented by
cyclotourist
at 2020-12-06 21:41
白神ライン様
コメントありがとうございます。
ずいぶん懐かしい記事への質問ですが、
お答えします。
乗ってるのは自分自身です。
自転車:トーエイ・ランドナー
(スチールのオーダー車)
タイヤ:650×32B グランボア・シプレ
(トレッドは杉目)
だったかと思います。
白神ラインはダート林道としては
非常に路面が綺麗なので、
タイヤ幅30mm以上あれば、
問題なく走破できると思います。
無人区間が長くアップダウンが多いので、
自転車とタイヤの適否よりも、
走行時間と補給食の確保が
大切だと思います。
ご参考になれば幸いです。
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