こんにちは、田村です。
やっぱり「乗鞍」は特別でした。
夢のようなTOMの宴から一夜明けました。
ひさしぶりにお会いしたみなさんと
惜別の情が湧いてきますが、
この日も「走れ〜」と言わんばかりの上々な天気。
朝食をいただき、記念撮影に収まったら、
再び吉田さんと走り出します。時刻は9時すぎ。
めざすのは、言うまでもなく乗鞍越えです。
ここまで来たら、越えたいものです。
その標高は2700m。前日に、1200mの楢峠を越えた
記憶が鮮明だけに、その倍以上の標高に至る道のりを思うと
やや目眩がします。宿の標高がすでに
800mくらいあるのが救いでしょうか……。
乗鞍へは4回くらい登ってますが、
岐阜側から登るのは初めてなのです。
吉田さんは乗鞍そのものが初めてとのことで、
二人とも無事にたどりつけるか、
いささか不安にも駆られます。
まずは、乗鞍スカイラインの入り口となる
平湯峠をめざします。淡々と国道158号を
15kmほど進むのですが、さすがに大型連休とあって
クルマが多く(画像には写ってませんが)、
ちょっと気をつかいます。勾配も5〜7%くらいが
延々と続く道です。
気温は24度ほどで快適ですが、
登りなのですぐに汗がふきだします。
誰にも、登りは自分のペースというのがあると思います。
それが、距離と時間の関係ではいちばん効率よく
進むのだと思います。そして、それよりペースを上げると
極端に疲れるものです。が、
この日は吉田さんのおかげで(汗)、
自分の標準的なペースよりかなり抑えて
進むことができたので、時間はかかりますが、
負荷が低くなって疲労がすごく小さいのです。
これはある意味、発見でした。
吉田さんにはまるで失礼な話ではあるのですが(汗)、
ゆっくり走れば走るほど、
体力をセーブできるという真理に
あらためて気づきました。
時間に余裕さえあれば、ツーリングに
速さは必ずしも必要ないのです。時間さえあれば、
どんな峠も越えられるのですから……たぶん。
(乗鞍は峠ではありませんが……)
ようやく国道から離れ、
平湯峠に上がる分岐に入りました。
とたんに勾配は10%クラスになり、
さすがにシンドくなります。
この日は、多くのMTB乗りと出会いました。
ちょっとお話ししたところ、前日の「王滝」に
参加されたという方々でした。アレを走って、
翌日は乗鞍を越えるというのもスゴいですが、
そんな猛者たちでも、平湯峠の手前では押しが入る方も
いましたから、やはりけっこうな登りなのです。
もちろんロードの方も大勢。
力強く登る写真のお方は……
なんと、以前お世話になった
松本のサイクリングクラブの方でした。
偶然の再会に、お互い驚きました。
吉田さんも力走ちう。
こだわりのデュラエース・トリプルとサンツアーBLという、
30年ほど前(たぶん)のメカをお使いです。
リアギヤは現代的なメカに比べると異様に小さく、
なんと最大23Tであらせられます!
さすがにフロントインナーは30Tでしたので、
30×23Tで……比率は1.3ほどでしょうか。
決して重いギヤ比ではありませんが、
自分は34×29Tなので、比率は1.1ほど。
現在のロード用メカは大きなスプロケットが使えるので、
フロントダブルの自分のほうが
いっそう軽いギヤ比が得られるのです。
さらに、自分はリア11速で、吉田さんは6速。
つまり……吉田さんの自転車は漢らしいのです。
「これがスポルティーフだ」と。
しかも、インデックスなしのダブルレバーです。
趣味も見た目もカッコいいとは思いますが、
ファミコン世代の自分には真似できません。
なお、自転車を含め、乗り物は女性らしい、ですね!?。
吉田さんのスポルティーフは
「流麗可憐号」と名付けられ、
ご本人は「ウララちゃん」と呼んでます……。
でも、実はたいへん漢らしい自転車なのです。
サイクリング歴がながいベテランの方ほど、
ロードやスポルティーフは重いギヤで平地快走指向、
ランドナーやパスハンターは軽くて登りや悪路優先指向、
という意識が強く、車種とギヤ比が密接なようですね。
世の中主流のワイドかつクロスレシオの
手元変速メカに慣れきってる現代っ子としては、
ギヤ比やメカで車種をわける感覚は希薄ですが……。
(MTBはともかく)
峠ラン中にいきなり話がソレてしまいましたが、
基本的にいかに楽をするか、しか考えてない自分です。
もっとも、日帰りの晴天なら、乗鞍のような
きれいな舗装路の登りは、軽量なロードが楽なのは
言うまでもありませんね。
やっぱりトーエイのロードもほしいなあ、
フォークはカーボンかなあ、パイプはなにがいいかなあ、
とか、そんなことばかり考えて登ってます(汗)。
平湯峠には11時半すぎに到着。
標高は1684mです。
1時間半もあれば着くだろうと思ってましたが、
2時間以上かかりました。
乗鞍まで、標高差あと1000mほど。
やや雲が多くなってきましたが、
いよいよ乗鞍スカイラインです。
この先は、一般車両が通行止めなので、
自転車はのびのびと走ることができます。
もっとも、観光バスはひんぱんに通ります。
平湯峠までは一般車両も来ることができるので、
ここまでクルマで移動し、載せてきた自転車を
降ろして走り出す人も多いようでした。
走り出してすぐ、
夫婦松展望台で一服。
トイレと広い駐車場があります。
標高が2000mを越えると、
山肌の木々が色づいてきました。
さすがに紅葉が早いです。
空気もひんやりと肌寒くなり、
頂上からの下りでは相当の寒さ対策が
必要になりそう。
標高が100m上がると、気温は0.6度ほど下がる
といわれてるので(たしか)、
標高800mの麓が気温24度であれば、
乗鞍畳平は気温が10度ほどになる
可能性すらあるわけです。
冬なら、10度は暖かく感じるほどの気温ですが、
この季節では非常に寒く感じるはず。
登りは発熱するので半袖が快適ですが、
下りは防寒対策がなければ耐えられません。
スカイラインに入ると、勾配が
ほとんど一定になり激坂は現れないので、
吉田さんも淡々と登ってきます。
淡々と休みます(笑)。
このあたりで、土湯峠から先行して
乗鞍に登り、すでに下りはじめていた
TOMの参加者さんとお会いし、
「あともう少しだよ」と声をかけていただきます。
そのお方も我々も、「もう少し」という言葉を
少しも本気にしてませんが(笑)。
娘と峠に登った際、自分がなんども
「あと少しだから」を繰り返していたところ、
「とーちゃんの詐欺!」とののしられたことを
思い出します(笑)。
峠の「あと少し」は、「まだまだシンドイぜ」と
同義なのですね。
それでも、止まらず走り続けてさえいれば
(それが難しいことが多いのですが)
ピークは確実に近づいてきます。
森林限界を超え、
あらわになった山肌には、背の低い高原植物が
ぽつぽつと生えてます。
荒涼としたダイナミックな光景です。
いよいよピークが近づいてくると、
高原風景が広がるようになります。
ついに畳平に到着。
当初、13時には着くだろうと思ってましたが、
実際は15時になってしまいました。
なにはともあれ、レストハウスに向かいます。
ハイカーとサイクリストでいっぱいです。
ちょうど下山しようとしていた
TOM参加メンバーに会いました。
また来年、ですね。
レストハウスで、暖かいうどんと
飛騨牛コロッケをいただきました。
この世のものとは思えないほど
美味しく感じられました。
県境から、いよいよ下りです。
眼下に見事な紅葉が広がり、
さすがに胸がときめきます。
小さいながら、雪渓も。
写真では見えない位置に、もうちょっと大きな
雪渓もありましたが、いまが一番雪が
少なくなる時期なんでしょうね。
ちなみに、こんなカッコで下りました。
登りは半袖ジャージ+レーパンでしたが、
アーム&レッグカバーを着用し、
さらに長袖ジャージを重ね着、
またそのうえにレインジャケットと
七分丈のパンツ(輪行および居酒屋繰り出し用)を
着込みました。
グローブはもちろん長指です。
さいわい予想どおり二桁の気温はあったようなので、
このウェアリングで寒さに悩まされることは
ありませんでした。吉田さんもほぼ同様のスタイル。
三本滝のスキー場が見えてきました。
あの先は一般車両も走れる区間なので、
ようやく麓に降りてきたなと感じます。
乗鞍エコーラインは、走るたびに路面がよくなってる印象です。
観光センターでひと休み。
もう16時半です。
さて、ここから下界への道が問題です。
松本へ直通する国道158号は、トンネルもクルマも多く、
とても自転車向きとは言いがたいルートです。
自分も自転車で走ったことはありません。
本来なら、白樺峠を経由して南へ向かい、
木曽福島へ抜けるのが無難です。
しかし、翌日は、松本から美ヶ原や霧ヶ峰へ向かう予定。
四国から遠路お越しの吉田さんに、
せっかくですから、信州らしい(ちょっとベタですが)高原の道を
走ってもらいたいなと思ったのです。
そのためには、なんとしても松本に出る必要がある……
と、思ってしまったのでした。
国道158号を下り続けて松本へ。
国道に入ると、とたんにトンネルとクルマの嵐。
ほとんど生きた心地がしませんでしたが、
それゆえ休まず止まらず下りに下り、
距離40kmほどを一気呵成に走り抜けて
松本へ至りました。
下り基調だからまだよかったものの、逆では
絶対に走りたくない道ですね。
やはり、木曽福島に出て、必要なら輪行で
松本へ移動すればよかったと大後悔。
すいません、すいませんと、吉田さんに謝り続け、
市街地が近づいてからは、さすがに国道を捨て、
農道をジグザグに進む道で松本の宿へ。
駅から少し離れた宿に到着したのは、
19時少し前でした。
ここは、吉田さんが見つけてくれた旅館で
その名も「松風」。実に速そうです。
しかも、一泊素泊まり3,500円!
この時期に空いてるだけでも嬉しいのに、
この安さ。奇跡です。
ふかふかの布団。
サイクリストにとって必要にして十分な、
極上の宿です。
しかし、まだ眠る時間じゃありません。
ひと風呂浴び、ついでに洗濯も済ましたら、
駅前へ繰り出します。
もちろん目指すは居酒屋ですが、その前に、
お土産物屋さんに立ち寄りました。
吉田さんは、ご家族や職場の方への
お土産をたくさんお買い上げされて、自宅へ
発送されてました。
社会人としての立派な振る舞いに脱帽です。
自分はどこへ行っても、ご当地萌えキャラグッズくらいしか
買いませんから(汗)。
馬刺、岩魚の姿作り、山賊焼き(鳥の唐揚げ)……。
信州らしいグルメが揃ったすばらしい居酒屋で
心行くまで痛飲しました。
この日も100kmくらい走りましたので、
それはもうビールがとてつもなく美味しく感じられました。
そして、昨日今日のサイクリングを思い返すだけでも、
話が尽きることはありません。
ここは、以前、松本のサイクリングクラブの方と
ご一緒させていただいたお店です。
店名は覚えていなかったのですが、
カラダが場所を覚えていたのでした。
所要時間の読みもルート設計も、突っ込みどころ
満載の自分でしたが、このお店にご案内できたことだけは、
我ながらエラい! と思いました(笑)。
松本の先輩のみなさまには、
あらためて感謝いたします。
次回、ようやく旅の最終日。
あの激坂を越えて、美ヶ原をめざします!