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シクロツーリスト&ランドヌールときどき模型の製作日記

cyclo.exblog.jp

B.B.BASE体験記

こんにちは、田村です。
B.B.BASE体験記_d0211129_11284463.jpg
昨日(5月20日)、「B.B.BASE」を利用してきました。
JR東日本千葉支社が運行するサイクルトレインです。
関東のサイクリストには大きなトピックとなっている列車なので、
概要をご存知の方も多いと思います。
今年の1月から走っているので、遅まきながらの初体験です。
同列車を利用したサイクリングを簡単にリポートしつつ、
そこで感じたアレコレを振り返ってみたいと思います。

まずは、きっぷを手に入れなければなりません。
実はこれが意外とやっかいで、これまで利用しなかった
理由のひとつでもあります。
B.B.BASEのきっぷは、駅の窓口や自動券売機で
買うことができません。
いわゆる旅行商品として販売されるため、
「えきねっと」か、びゅうプラザで事前に申し込みます。
しかも、4月までは、どのような方法でも5日前に
申し込む必要がありました。
5日前から必ず出発する! と決断するのは、
天候に激しく左右されるのが宿命のサイクリングにとって、
なかなかに高いハードルです。
普通の列車なら、指定券でも利用日を簡単に変更できますが、
旅行商品の場合、10日前から相応の取り消し料がかかります。
また、B.B.BASEが向かう房総エリアは、
ほかにアクセス手段がいくらでもあるので、
あえて何日も前に旅行商品を買う必然性がないですし、
「絶対○日に行く!」と、天候を度外視して
意気込むようなエリアでもありません。

ところが、4月からは、びゅうプラザの窓口に行けば
前日でも(日帰りの場合。泊まり付きの場合は二日前)
B.B.BASEを予約できるようになりました。

そこで、行こうと考えた日(5月20日)の天気がよいと
大むね確信できるようになった三日前になって、
びゅうプラザに出向いて予約してきました。
佐原往復日帰りで6400円です。
この金額の是非については、後述します。
B.B.BASE体験記_d0211129_11575716.jpg
日帰りとは言え旅行商品。
佐原駅近郊で利用できる1000円分のクーポン券もあり、
きっぷは8枚に及びます。
加えて、行程表や利用案内のプリントなどを
どっさり受け取りました。
これら書類には「ご旅行中は携帯してください」と
書いてあるので、一式をサドルバッグに突っ込んでいきましたが、
けっこうな荷物ではあります。

さて、毎週末に運行されるB.B.BASEですが、
東京側の始発駅はすべて両国駅です。一方の目的地は週ごとに変わります。

内房(館山か和田浦で下車)
外房(勝浦か安房鴨川で下車)
銚子(松尾、干潟、銚子で下車)
佐原(佐原駅で下車)

上記4パターンがあります。
B.B.BASEは一編成しかないので、
行きたいエリアを選びたい場合(普通はそうですが)、
そこを選択できる機会は一ヶ月に一回の週末だけ、
ということになります……。

自分の場合、ぶっちゃけどこを走ってもいいので(汗)、
20日に乗ることを優先し、結果的に佐原行きになりました。
この極めて自由度の低いB.B.BASEの運行によって
可能になるサイクリングの楽しみ方もある……かもと思います。

自分が乗るB.B.BASEは、両国駅を8時12分に出て、
佐原駅には9時42分に到着します。
そして、復路は同じく佐原駅を17時32分に出る
B.B.BASEに乗ることになります。

通常の輪行アクセスでは、往路と復路、つまり入り口と出口の駅を
変えることで多彩なコースを考えることができます。
また、復路は駅に着いた時間に合わせて
きっぷを買う・変更することができます。
B.B.BASEは、そのどちらもできません。
入り口と出口が同じで、時間も動かせません。
片道だけB.B.BASE、という買い方もできますが、
今回はあえて往復ともB.B.BASEに乗ることにして、
その「縛り」を楽しんでみることにしました。

結局、サイクリングの醍醐味は走ること自体にあるので、
B.B.BASEにしろ普通の輪行にしろ、
走りが充実するかどうかが最優先事項です。
そこで、佐原駅を9時42分にスタートして、
17時32分までに戻ることができるプランを考えます。
佐原を起終点とし、実質7時間ちょっとで
走ることができるのが条件です。
こうした「縛り」があるほうが、コースを決めやすいとも
言えますし、時間と行程の進捗を気にしながら
緊張感のあるサイクリングを楽しめる……かも知れません。
B.B.BASE体験記_d0211129_12310933.png
佐原から銚子まで往復することにしました。
往路は利根川の土手に延びる自転車道を利用し、
復路は、犬吠埼から外川へ回り込んで屏風ヶ浦などを見た後、
利根川を離れた内陸部を進むことにします。
この復路は、ほとんど馴染みのないエリアなので、
特に見所がなくても何となく気分が高まります。
距離は102kmとそれなりですが、獲得標高が300m未満なので
地形的にはイージーでクルマも少なそう。
それだけに風向きの影響を顕著に受けるエリアですが、
予測では北風基調の微風だったので、キツイ向かい風にはなるまいと
希望的に考え、このコースをハンディGPSにセット。
そして迎えた当日、いよいよ
B.B.BASEに乗り込むことになりました。
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自宅から両国駅までは10kmほど。
陽射しは朝から強いものの、気温は20℃くらいで
清々しい日和に恵まれました。
写真の駅舎正面ではなく、西側の臨時改札に向かいます。
B.B.BASE体験記_d0211129_12395763.jpg
通るべき道に案内プリントが貼られており、
迷うことなく進むことができました。
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フェンスで区切られた敷地から、
直接3番ホームに上がります。この番線は定期列車の利用がなく、
幻のホームなんだとか。こうした自転車を転がしていけるホームが
あるからこそ、両国駅がスタート地点になったんだなと実感。
構造が複雑で人混みが絶えない新宿駅や東京駅では
自転車を転がすなんて許されないでしょう。
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発車30分前から入線してるB.B.BASE。
今や廃車が進みつつある209系の通勤電車を改造した車両で、
6両編成です。
見た目の好みは人それぞれなので何とも言えませんが、
個人的には萌えませんね……。
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車内は一新されています。
四席ないし二席ずつのセミコンパートメントが配され、
それぞれのシート裏に、自転車を縦に吊るすラックが設置されています。
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コンセント付きの大きなテーブルが固定されています。
シートはリクライニングせず、やや硬い座り心地。
ヘッドレストは上下します。
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完全にグループでの利用を見込んだシート配置です。
だから娘を誘ったんですが、あえなく断られて(汗)
今日は一人旅です。
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愛機をラックにセット。
よいしょっと持ち上げる必要はあるものの、
簡単かつ確実に固定されます。
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前輪を載せるラックを展開した様子。
機能重視の無骨な造りですが、それだけに丈夫そう。
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ラックにはダンパーが接続されており、スムーズに動作します。
ガチャン、と落ちたりはしません。
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35Cのセミノブタイヤが隙間なく収まりました。
ラックの内側にゴム製でチューブ状の緩衝材があり、
異なるタイヤの太さに対応しています。
タイヤ幅50mmまで搭載可能らしいですが、
ラックがダウンチューブの下まで伸び、タイヤのかなり高い位置まで
抑えるため、マッドガード付きの自転車は
搭載できません。
もちろんタンデムやリカンベント、ファットバイクなんかも
NGですね。
このように、B.B.BASE自らの仕様が、ますます「縛り」を
生んでおります。
このあたりの解決策はすぐに思いつくのですが、
後述します。
B.B.BASE体験記_d0211129_13125222.jpg
とりあえず、初使用でも迷うことなく確実に
自転車を搭載してくれます。
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運転士、車掌さんとは別に、
3人のクルーが乗り込みます。

さて、定刻通り8時12分に発車。
津田沼と千葉に止まりますが、その両駅から乗り込む場合は
輪行袋に入れる必要があります。
さすがに途中駅から乗り込む方は見当たらず、
両国駅で乗り込んだ13名がすべてでした。
B.B.BASEの定員は99名なので、
乗車率は約13%。
外房や内房コースに比べ、佐原は地味感があって
利用客が少ないのかもと思ってましたが、
ちょっと少な過ぎます……。
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発車ほどなくしてクルーが車内を巡回し、
8時30分から4号車でレクチャーがあると触れ回ります。
4号車は指定席がないフリースペースになっていて、
ロングシートと手すり、モニタなどが設置されています。
お菓子なども販売しています。
ここで佐原市の観光ムービーを流したり、モデルコースの
パンフレットを配布したり、「乗り遅れないように」と
注意を促されたり……。
このレクチャー時間やクルーの接客(?)によって、
自分のB.B.BASEに対する
評価はだだ下がりとなったのですが、
詳細は後述します。
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車窓は平凡ですが、市街地を抜けると
青々とした水田が広がるようになり、輝くような青空と相まって
なんとなく気分が上向いてきます。
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佐原駅到着も定刻通り、9時42分です。
改札口側のホームに付いてくれるので、
楽々と外に出ることができます。
輪行の収納と組み立てが早いことだけが自慢の自分ですが(汗)、
さすがにサイクルトレインは便利だなと実感します。
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この歓迎ムードがうれしい。
わずか13名でスイマセンと恐縮してしまいます。
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江戸時代に栄えた商業都市にふさわしい和風の駅舎。
バイクラックも登場しており、全面的にサイクリスト歓迎ムードです。
輪行袋を広げることなく、ここに自転車と一緒に
立っている現実が不思議に思えます。

いよいよサイクリングの開始。
アームカバーとレッグカバーをしてきましたが、
それでも肌寒さを感じるほど風が強い日でした。
とりあえず駅前のコンビニで水と補給食を確保し、
一路、利根川沿いへ向かいます。
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思いのほか向かい風成分が強くて進まない!
いきなり心が折れそうになりましたが、
最初の5kmほどを過ぎれば進行方向が変わることを思い出し、
(佐原あたりだけ利根川が北に盛り上がってる)
我慢してノロノロ進みます。
目安として、13時までに銚子・犬吠埼あたりに
着きそうもなければ引き返すか輪行しようと決めてました。
サイクルトレイン利用とは言え、輪行袋は持ってます。
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幸い、向かい風から横風に変わりましたが、
それでも抵抗が多少は増えるので、
利根川沿いの距離25kmを走り終える頃には
だいぶ疲弊してしまいました。
オニギリをひとつ食べてから、一般道に出て銚子へ向かいます。
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次第に風向きがよくなり、
君ケ浜越しに犬吠埼を望む頃には平均時速20kmを越え、
12時過ぎには白亜の灯台を望むことができました。
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ああキレイだなと思いつつ一服し、
速やかに次ぎなるスポットに向かいます。
ペースは悪くないものの、やはり列車の時間が決まってると
気が焦ります。
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銚子電鉄の犬吠駅。
ここにもバイクラックが登場してました。
元々へんな駅舎ですが、
訪れるたびに色が変わってる気がします。
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味のバリエーションが増えたぬれ煎餅と、
クリアファイルを購入。二人の女の子は、
地元の高校生が描いたそうです。微妙に萌えます。
今後の展開に期待しつつ、銚子電鉄が誇る
名駅に向かいます。
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終着の外川駅。木造駅舎が素晴らしく渋い。
銚子に来たら訪れずにはいられない癒しスポットです。
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時間が止まったような、どこか懐かしい駅舎。
ベンチで居眠りでもしたくなりましたが、
B.B.BASEが待つ身としてはそうもいきません。
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白い波頭が寄せる外川の集落を抜け、
ぐんぐん先に進みます。このあたりは追い風になったので
35Cのセミノブタイヤを履いたグラベルロードでも
時速30km近いペースで巡航できて爽快そのもの。
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先を急ぎつつも、屏風ヶ浦をパスするのは惜しいので
遊歩道に自転車を進めます。ドーバー海峡に比される海岸美が
しばらく続きます。ドーバー海峡がどれほどキレイなのか
知りませんし、無理に欧米の名所になぞらえる必要も
感じない絶景です。
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ほどなくして海岸線に別れを告げて北上を開始、
広域農道と県道をつないで佐原をめざします。
B.B.BASE関連の某パンフレットに
「香取市の南側には、これといった見所はないが〜」などと
ばっさり書かれていましたが、
進むごとに緩やかな丘陵と田園が交互に現れ、
飽きることがありません。
風車を見ながら風向きに一喜一憂しつつも、
走ることに集中できる好エリアです。
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丘陵に上ると富良野のような色っぽいカーブの畝が畑に連なり、
そこを下ると一面に田植えを終えた水田が広がります。
関東一の米どころです。
こうした農業地域にも、コンビニが点々とあるのが
千葉の有り難いところ。サンクスがファミリーマートに、
セーブオンがローソンに統一されてしまったのは寂しいですが、
今日のようにトッとと走る必要があるサイクリングでは
手軽に補給できるコンビニの存在が欠かせません。
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15時半には佐原に戻ってきました。
銚子エリアの散策でペースが落ちましたが、
それ以外はコンビニに二回寄ったくらいでセッセと走ったおかげで、
予想よりも早く戻ることができました。
B.B.BASEに乗る時間まで、ゆっくり街めぐり。
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局所的に外国人観光客が群れていて辟易としましたが、
ちょっと中心地を外れると静かなものです。
伊能忠敬の記念館や銅像を見たりしても
まだたっぷり時間があります。
そこで、駅前の観光案内所へ顔を出し、
1000円分のフリークーポンを使わせてもらいました。
結局、ここでもぬれ煎餅を手に入れ、
サドルバッグはパンパン。
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観光案内所で教えていただいた銭湯へ。
あまりにも入り口が分かりにくく、前の通りを
二度も往復。それでも見つからず、すぐ近くの商店で
訊ねてようやく見つけることができました。
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ほとんど庭のような路地を抜けます。
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明治初期から続くという柳湯。
ゲーム機が渋い。近頃の世相と無縁の灰皿もうれしい(汗)。
料金300円で、タオルも無料で貸してくれました。
さらに、なぜかお菓子までいただき、
身も心もほっこりして駅に向かいました。
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改札の向こうで、しっかりB.B.BASEが待ってます。
輪行が手間とは思わない自分ですが、
やはり自転車を転がしていけるのは快適。
道が列車の中まで続いているようです。
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両国駅から自宅まで走るので、
泡が出る飲み物が飲めないのは少し残念ですが、
ぬれ煎餅はやっぱり美味い。
シンプルな醤油味が好みに合いますし、
自分は前歯が差し歯なので、シットリした柔らかさが
この上なくうれしいのです。
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復路も定刻通りの運行で、19時29分に両国着。
すでに100km走って、佐原では気だるさも感じましたが、
ぬれ煎餅でだいぶ回復したようで、
自宅までの10kmも気持ちよく走ることができました。

こうして、かなり良質の満足感を得ることができた一日でした。
風は強いものの好天に恵まれ、
自分が計画したコースを、予想した時間内で
ちゃんと走りきることができました。
それだけで嬉しいものです。

その機会を与えてくれたのがB.B.BASEですから、
やはり感謝したいと思います。ありがとう、209系改。
また近いうちに利用したいと思います。

最後に、いちサイクリストとして感じた
B.B.BASEについての印象や改善すべき点などを、
思いつくままに列記してみます。
雑誌の記事などでは書かない辛口ですが、
すべては可能性を信じる愛ゆえに……。


●運行について
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週末のみで一日一往復、出発地は両国限定、行く先は週変わり……。
窓口に行けば前日でも予約できるようになったと言うものの、
思い立った時に好きな駅へ向かうことができる、という
通常の鉄道輪行に慣れた身には、かなりキツイ制限があるB.B.BASE。
一編成しかなく、平日に運行しても
多くの利用者が見込みづらいから仕方ないですね。
これはどうしようもないです。
新幹線や「あずさ」みたいな頻発多需要特急と
比べるのは無理。
だから利用できない、しない、と考えるのも仕方ないでしょう。

自分は開き直って、かつての「北斗星」や「カシオペア」と
同じように、特別な列車だと思うことにしました。
(さすがに「四季島」は乗ったことない。汗)
つまり、その列車に自分を合わせるしかないんです。
B.B.BASEに乗れる日に予約し、
B.B.BASEが発着する駅を基準にコースを考え、
B.B.BASEに乗れるような距離を走る。
今回、自分はそのようにしたわけですが、
制約の強さがかえってサイクリングを
充実させてくれた気がします。
特段、佐原に興味があった訳でもないですが、
周辺を走って、街を見てみると、
新たな発見に満ちていました。
55歳から全国を測量した伊能忠敬って、
理想のアクティブシニアだと感じました。

佐原には失礼ながら、いつもの輪行で選ぶことは
まずない駅ですし、北総というエリア自体、
積極的に訪れることはありませんでした。
実際、信州や北海道に比べたら華を感じないエリアです。
やっぱり、B.B.BASE的な新幹線ができればいいなと思いますよ。
しかし、いつもいつも峠だ地平線だと高望みしていても
キリがないですから。
今あるB.B.BASEを利用して、
より積極的に房総を走りたいなと思いました。

もう少し、現地への到着時間が早いほうが助かりますが、
必然的に両国発も早くなるので、悩ましいですね。
銚子行きなどは、年末年始に「夜行B.B.BASE」とか
運行しても楽しそう。初日の出のメッカですから。

●車両全般について
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通勤電車を改造したB.B.BASE。
中途半端に古いタイプで、国鉄型のようにレトロ感があるわけでなく、
少なくとも外形はカッコよくない。
見た目のデザインは、結局は好みの問題なので
いい悪いじゃないと思いますが、モノトーンのカラーリングが
冷たさを助長するようで、旅情は薄い車両です。
自分のこの印象は、JR九州の観光列車と比べたら……
というものなので、高望みが過ぎるのかもしれません。
向かい合わせのセミコンパートメント席は
グループには楽しいかもしれませんが、一人では微妙。
もっとも、自分が体験した低い乗車率では、
一人でコンパートメントを占有できるので問題ないですが……。
シートは背もたれが固定なので、特急に比べると
落ち着きませんでしたが、乗車時間がさほど長くないので
十分とも言えます。また、総武線・成田線とも線形がいいので
乗り心地は悪くないです。
床は滑り止めが効いていて、クリート付きで歩いても
不安が少ないです。
トイレは使わなかったので、不明です。

●ラックについて
B.B.BASE体験記_d0211129_14582074.jpg
スペースの有効活用と、確実な固定を両立させた
秀逸なラックだと思います。
ただ、根本的に縦型積載という方法は、
99名の最大乗客数分の自転車を
積み込むための苦肉の手段とも感じます。
また、事実上、ロードバイクとクロスバイクに特化した
仕様になっています。
大抵のミニベロでも問題なさそうですが、
やはりガード付きの自転車(要はツーリング車)が積めないというのは
ツーリングを楽しむためのサイクルトレインとしては
大きな欠陥だと思います。
ガード付きの自転車は、輪行が手間なので、こうしたサイクルトレインを
利用できると本当に助かるのですが……。

これは簡単に解決できるはず。
ガード付きの自転車の場合、車両端やフリースペースに
「そのまま」置いてもらえばいいんです。
車輪を抑えるスタンドや固定ベルトくらいは
あったほうがいいでしょうが、
全国各地のサイクルトレインは、特別なラックなしで
運用してます。
99名全員がガード付きの自転車で来たら?
そんなことはありえないでしょう(笑)。
運用側として心配なら、
「ガード付き自転車の方は予約時に申し出てください」
くらいの一文を設ければ事前に把握できると思います。

●4号車フリースペースについて
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通勤電車のDNA(?)を感じさせるロングシートと
大型ディスプレイが設置されたフリースペース。
現状では、効果的に活用されているとは
思えませんでした。
寝台特急などの場合、自席が個室であることが多いので、
なかまと談笑するスペースとしてフリースペースが
重宝しましたが、各席がセミコンパートメントである
B.B.BASEにとって、わざわざ自席を離れて
より安直なロングシートに座る必要がないです。
そして、情報発信・提供スペースとしても
活用されているといえません。
クルーが佐原市の観光ビデオなどを流してましたが、
そういう映像で時間的に拘束されるのは
不快に感じました。
フリースペースを訪れた乗客が、自発的に
閲覧できる(興味なければ見ないですむ)
パネル展示や冊子の積みおきなどでよいかと思いました。
クルーの手作りでいいんですよ。むしろ、それがいい。
物販は、籠にお菓子などが入っているだけで、
特に力が入ってません。もしかしたら他にも何か
売ってるのかも知れませんが、分かりませんでした。
せめてウォーターサーバーがあるとか……。

この4号車は、前述したようにガード付きの自転車を載せたり、
タンデムやリカンベントなども
載せてくれるスペースにしたらいいと思いました。
実際にそうした自転車の利用者が少ない・いないとしても、
「ちゃんとサイクリストのことを考えてる感」が
いっそう出ると思います。それが乗客の心地よさにつながります。

また、B.B.BASEを降りて向かうであろう各地の駅や
地域の観光案内所と連携を取って、当日現地の天候や風向き、気温などを
貼り出したり、通行止めなどがある区間を示すなど、
B.B.BASE内だからこそ知りたい情報を提供してほしいと思います。
人気店の日替わり定食のメニューとかでもいいでしょう(笑)。
4号車は、クルー次第で今以上に活用できるスペースだと思います。

●料金について
B.B.BASE佐原日帰り往復で6400円。
日帰りの交通費としては高いとも感じますが、
妥当と思える設定です。
普通列車で両国から佐原へ行くと、1600円くらいかかります。
往復で乗車料3200円。
両国から佐原に向かう定期的な特急がないので(たぶん)
正確には分かりませんが、B.B.BASEは事実上特急なので、
特急料金が1500円くらいかかるはず。
これが往復で3000円。
つまり、だいたい6000円になります。
1000円分のフリークーポンが付属することを考えれば、
良心的な価格設定と言えるかも知れません。
交通費の高低も要は価値観なので、
「高い」と思えば利用しなければいいでしょう。

自分も少し高いなとは思いますが、振り替ってみれば、
三島へはたびたび新幹線で往復して8000円も出してます。
それを苦にしないモチベーションが沼津にはあるわけですが(笑)。

●モデルコースについて
B.B.BASE公式ホームページや、一部のパンフレットなどで
走るべきモデルコースが紹介されています。
ただ、数が少ない上、自分としては「?」と
思えるコースもあり、魅力が乏しいです。
本質的には、走るコースは自分で考えるのが当然な訳ですが、
B.B.BASEを利用してアクセスしたくなる
モチベーション作りが必要かとも感じました。
定番なのはスタンプラリーでしょうか。
クルーの方が「JRとして特定の店舗などを紹介するのは難しい」といった
意味のことを言ってましたが、思考停止に近いです。
また、フェイスブックで「B.B.BASEファン」なるものがあって、
そこで誰かしら発信してるとのことですが、
そのような非公式でどなたが書いたか分からない情報を
(もしかしたら関係者がやってるのかもしれませんが)
参考にしたいとは思えませんでした。
フェイスブック、ふだんからほとんど使ってませんし(汗)。

●クルーについて
正直、いちばんの改善要素だと感じました。
とても親切でやる気があるのは痛いほど伝わるのですが、
その振る舞いが洗練されてない。

「本日はどちらへ走る予定ですか?」
「銚子まで往復しようかと」
「最高ですね! 川沿いで自転車道ですか?」
「往きは。帰りは内陸を……」
「往復とも川沿いがいいです」
「……(決めるのは自分ですよ)」
「内陸に見たいのがあるんですか?」
「……(ないけど走りたいだけ。悪いのか?)」

乗る時に声をかけられ、いきなり交わされた会話です。
復路での乗り遅れを心配してのアドバイスだと思いますが、
自分が考えてきたプランを、当日になって変更させるほどの
説得力がありません。自分がどれだけ走れるか?
少なくとも初対面のクルーさんよりも、自分自身のほうが
分かってますから。
また、クルーさんがどれほどサイクリストとして
優れていたとしても、自分がそれを知る由もありません。
歯に衣着せずに言えば、「馬鹿にすんな」。

とにかく、早く佐原に戻って、という発言が多く、
お風呂に入るなりして時間を調節して列車に戻るように、と
何度も乗客に伝えてきます。
そういうガイドツアーや小学生の遠足ならともかく、
こちらは自由に走るつもりでB.B.BASEに乗ったのだから、
ほっといてほしいものです。

自分がクルーに望むものは「ゼロ」です。
出発や到着の案内は、本職の車掌さんが
ちゃんとアナウンスしてくれます。それだけで十分。
もし混むときがあれば、自転車の固定などを
サポートするクルーが必要でしょう。それも
両国駅で対応すれば済むので、
クルーが車両に同乗する必要は
ないのかもしれません。

フリースペースでのレクチャーは、開催前に
各席までクルーが誘いにきました。
若干無理強いです。アナウンス(放送)だけに留めてほしい。
しょうがないから赴いたフリースペースでは、観光ビデオを流し、
パンフを渡し、遅れるな・列車は待てないと言い、
質問ありますか? と聞くだけ。
その観光ビデオが、見だすと実はけっこう面白くて、
「江戸勝り」という自負が佐原にあるとか、
お祭りの様子とか知ることができ、だんだん真剣に
見始めていたら、クルーが「もういいでしょ」と
途中で映像を止めて、自分の話を始める有様。
じゃあ、最初から見せないで欲しいっす。

その後も、各席までクルーが回り、
コースについて質問ありませんか? と聞いて回るクドさ。
自分は軽く眠くなったので眼をつぶって、
近寄るなオーラを出していたつもりですが、
それでも声をかけてくる……。
「隣に座っていいですか?」
「……(やめてよ)」
もう自分からクルーに聞きたいことはないですし、
叩き起こされたような状態なので、
仮に質問があったとしても
そんな気分にもなりませんでした。

こちらはクルーに何も期待してないのだから、サービスはゼロでいい。
少なくとも不快感を与えない接客を
マスターしてほしいところ。
もしかしたら、B.B.BASEクルーの接客がツボに
はまる利用客もいるのかも知れませんが、
自分としては無駄に元気な居酒屋かラーメン屋のお兄ちゃんに
接しているようで楽しくはありませんでした。
ふつう、乗務員やアテンダントが車内を通るときは、静かに歩いて、
出入りするときは黙礼します。
そういう教育に基づく振る舞いもない。

たぶん、他の観光列車のアテンダントさんの
スキルなどを知らないんだと思います。
津軽鉄道のスルメ焼きとか、「ゆふいんの森」の優雅な
アテンダントさんとか、見習ってほしい。
新潟のメイドバーでもいい(笑)。
圧倒的な芸か知識を持っていて、それでいて押し売りせず、
自然と利用客のほうが話を聞きたくなり、
訊ねた時には万全のアドバイスをしてくれる……
そんな接し方が理想だと思うんですよね。
もしくは、ハナから乗らないで、サービスゼロがいい。


B.B.BASEは特別な列車だと思います。
自転車をそのまま車両に持ち込めるという取り組みは、
全国各地の鉄道でちらほらと採用されていますが、
専用の列車を用意して、首都圏からスタートし、
ある程度の長距離を定期的に運行するB.B.BASEは
空前(絶後にならないことを祈りつつ)の存在です。

B.B.BASEに関して、いろいろ辛口コメントを綴りましたが、
基本的にはオススメです。房総サイクリングを楽しむ
アクセスのひとつとして、ずっと存在してほしいと思います。

鉄道全般は、あまりに身近すぎて、
なくなって初めて大切な存在だったことに気付いたりします。
各地のローカル線しかり、ブルートレインしかり、そして
JR九州が走らせていたサイクルトレイン「あそ1962」しかり……。

僕のようにオタク属性がある人の場合、
本気で押すアニメがあったりすると、その二期を期待して
録画していてもブルーレイなどを買うものです。それがオタクの愛です。
房総が好きなサイクリストなら、一度はB.B.BASEを利用して、
その存続を応援すると共に、あらたな房総の魅力を
発見してほしいと思います。



by cyclotourist | 2018-05-21 17:02 | おしらせ | Comments(8)
Commented by まりきち at 2018-05-22 08:01 x
企画と製造と営業とそして受け入れ先の自治体がバラバラな感じなんですかね?
とは言っても高架駅や改札がホームの上にある駅が多いJRでは地方私鉄のような気軽なサイクルトレインは難しいのはわかるのですが……

時々走っているを見ますがいつもガラガラです。
PR不足な気がします。
本数を増やして自由度をつけて欲しいところですが今の乗車率では企画が成功しているとは言えない状態かもしれませんね。
もっとなにかレースや大会を開催して組み込めば知名度が上がるのでしょうが……
Commented by ばっきー at 2018-05-22 08:32 x
田村編集長

鉄道好きサイクリストとして一度試してみなければ、という使命感溢れる長文記事ありがとうございました。

まだ企画自体が練れてないですよね。すごくPRされているので記事はよく見るのですが、ここまで詳しく書いてあるレポートは初めて見ました。やはり両国スタートというところが、私の場合には家からつまらない都心を自走で横断しなければならないがしんどいです。なので乗りたいと思った事がありません。

あと、一人で乗っている時に色々と話しかけられるとか、めんどう以外の何者でもありませんね。その辺だけでも改善されてきたら、話のタネに一度乗車してみようかな?

何だかんだでこういう取り組みは珍しいので、少しはお布施して選択肢として存続して欲しいという気持ちは同じです。
Commented by cyclotourist at 2018-05-22 09:44
まりきち様
コメントありがとうございます。
佐原も銚子あたりも、サイクリストを歓迎している
ムードは高かったので、自治体、というか
地元の人はがんばってると感じました。
バイクラックも本当に増えましたし。
B.B.BASEに関しては、ほとんど千葉を走ってるのに
貴兄のような千葉県民が利用しづらいのも残念ですね。
メインのアクセス手段にはなりえない列車ですが、
こういう選択肢があるというだけで
自分はうれしいものです。いちばん怖いのは、
B.B.BASEがあるんだから普通の列車で
輪行しないように、とか逆ギレされる
ことですね(汗)。

ばっきー様
コメントありがとうございます。
買い物や通学の足じゃない、ツーリング指向の
サイクルトレインというのは本当に貴重なので、
乗って残そうB.B.BASE、って感じですね(笑)。
おっしゃるように、実用性は低いので、
話のネタのために乗るというので良いと思います。
実際、両国駅からあらためて輪行してる利用者が
多かったですね。
Commented by Densuke at 2018-05-23 20:06 x
JRがやった事を考えれば取り敢えずは良い企画だと思います。両国発というのはJR千葉支社の独自(独断?)企画なので東京支社内への乗り入れは出来ないのだろうと思います。
4号車は仰る通り、後々は普tr数の自転車を置くスペースにする事が想定されていると思います。ドイツなどの自転車スペースを参考にしていると思われます。
ここで必要なのは続けるという事でしょうね。ちょっと試してダメだったから止めるとなると先が更に無くなりますから。なんとか商業的にも成功して欲しいものです。
Commented by 津田圭 at 2018-05-23 21:32 x
今まで読んだ中で最も深く書いてある体験レポですね!

千葉県民として一度は利用したいと思いながらも、都会に向かってから房総という違和感のためにいまだに利用できないでおります。

記事を読んで、楽しみな反面、クルーはウザそうでちょっと閉口しています
Commented by cyclotourist at 2018-05-23 21:47
Densuk様
コメントありがとうございます。
続けてもらうためには、我々が利用するのが
いちばんなのでしょうね。
続いてほしい、成功してほしい
という想いを現すには、
乗るしかないでしょうから。
今はたいへん使いづらい列車ですが、
多くの人が使いたいと思えるように
進化してほしいですね。
Commented by cyclotourist at 2018-05-23 22:33
津田圭様
コメントありがとうございます。
千葉の方にとっては、本当に
使いづらい運用の列車ですが、割り切って
「乗るために乗る」しかないと思います。
クルーに関しては、ずいぶん辛辣に(正直に)
書いちゃいましたが、感じ方は
個人差がとても大きい事柄だと思います。
あくまで自分が一回だけ経験した印象です。
もう少し乗車率が高ければ、
過度なコミュニケーション要素は
自然になくなると思います(汗)。
Commented by Densuke at 2018-05-29 01:52 x
仰る通りで企画運営する方にも経験が無いのですから最初から完全なサービスを期待するのも可哀相かなと、、多くの人が利用して意見を述べて改良を重ねて行く、というのが最善策だろうと思います。
東京都内にも使える駅施設は有ると思いますけど(貨物駅の端っことか)、東京支社は自転車の取り扱いに付いて全く異なる見解を持っているのだろうと想像しています。
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