こんにちは、田村です。
この三連休は、ひさしぶりに
ツーリングらしいツーリングを堪能してまいりました。
この季節恒例の、トーエイの自転車を
愛するファンにとって最大のイベントが、
トーエイオーナーズミーティング(TOM)です。
15回目となる今年のTOMは、
飛騨高山で開催されました。
16、17日の宿泊ミーティングです。
僕は3回目の参加ですが、毎年異なる会場へ
輪行+サイクリングでアクセスするのが
大きな楽しみでもあります。
昨年に続いて、ベテランサイクリストのIさんと
ご一緒させていただきました。
新幹線「のぞみ3号」で名古屋へ向かい、
乗り換えた特急「しなの3号」を降りたのは……
木曽福島駅です。
JR中央本線の木曽福島駅は、東京方面からの
アクセスがなかなか悩ましい(というか楽しい)
位置にあります。
距離が短く、運賃も安いのが「中央線乗り続け」パターン。
新宿から「あずさ」に乗って、塩尻で「しなの」に乗り換えます。
ただし、「あずさ」が基本的には7時以降発しかなく、
しかも特急といえど在来線なので、所要時間が増えます。
次に距離が短いのが、「長野経由」パターン。
長野新幹線で長野駅にワープし、そこから「しなの」で
南下していきます。
今回の「名古屋おりかえし」は、距離的にはもっとも長く、
料金もかかるのですが、いちばん早く
木曽福島へ到着できる方法でした。到着は9:25と、
ツーリングのスタートとしては早いとはいえませんが、
木曽の山中にこの時間に到着できれば御の字です。
手際よくトーエイスポルティーフを
組み立てるIさん。
ガード付きのツーリング車は輪行がめんどう、
という先入観を持つ方もいるようですが、
慣れてしまえば簡単です。
木曽からスタート、ということは、
もちろん乗鞍を越えて高山へ行こう!
というコースです。
三連休をフルに活用し、
15日は乗鞍のふもとにある新奈川温泉で一泊し、
16日に乗鞍を越えてTOM会場へ。
17日は……ノープランです(笑)。
この乗鞍越えツーリングは、だいぶ前から
I さんと計画しつつも、天候不良だったり通行止めだったりで
何度も見送ってきた念願のコース。
Iさんは毎年のように乗鞍を走ってらっしゃいますが、
僕は6年くらい前に、例のヒルクライムレースで
走ったことがあるだけ。だからツーリングで訪れるのが
とても楽しみにでした。
初日のコース概要。
木曽福島から飛騨街道を北上し、
地蔵峠を越えて開田高原へ。続いて
御岳山を拝みながら九蔵峠、長峰峠を走り、
「あゝ野麦峠」で締めて
新奈川温泉でしっぽり……という
峠三昧コース。
距離80km、獲得標高2100mです。
ゆっくり自転車を組み立て、10時にスタート……
ふと、駅前の土産物屋さんを見ると、
アスリート系サイクリスト御用達の補給食が並んでます。
700Cや26インチのチューブも!
なんでも、店主がサイクリストだそうです。
これは心強いですね。
駅の直下にあるコンビニで飲料や補給食を調達後、
国道361号線に入ってのんびりと進んでいきます。
5kmほど進んだら、地蔵峠へ向かう旧道の分岐が現れるので、
それを左へ。
高さ100mという唐沢の滝を遠望。
おおむね5〜7%ていどの勾配が
続く道を登っていきます。
木陰も多く、インナーギヤをくるくる回していけば
さほど苦労せずに進むことができる峠道です。
このあたりの峠はいずれも
1000m超級ですが、木曽福島駅ですでに標高770mもあるので、
さほどエグイ峠越えにはなりません。
11時10分過ぎ、地蔵峠着。開田高原の入り口です。
標高は、現地の看板によると1335m。
『日本山名事典』(三省堂)によると1320m。
この本は、峠名や標高の確認に愛用しているのですが、
「地蔵峠」を引くと2ページにわたってずらり!
北は岩手県、南は大分県まで35もの
「地蔵峠」が載っています。
お地蔵さんに道中の無事を祈願しつつ
一服していると、ロードに乗ったサイクリストが到着。
大阪からお越しとのことで
「関西でレースも走れるオーダー車はナカガワだけや」と
語ってくれました。ピンクのロードが素敵です。
お二人を見送ってから、ゆっくりと峠を下っていくと……
御岳山が雄大な姿を現します。
自転車を停め、絶景に見とれることしばし。
標高差250mほど下って開田高原へ。
道祖神や馬頭観音、石仏がずらりと
並んで旅人を迎え入れてくれます。
開田の小学校は運動会の真っ最中。
「ウチの輪行むすめも来年は小学校なんですよ〜」
「運動会は見に行ったほうがいいよ。大切、大切」
なんて娘の親同士の会話をしながら進んでいくと、
国道361号線に出る分岐を通り過ぎてしまったりして、
なんともノドカな道のりです。
ちょっとした峰を回り込むと、
目の前に御岳山が広がる九蔵峠に到着。
ちょっと八ヶ岳にも似てるなあと思いつつ、
国道361号線を淡々と先に進みます。
このあたり、そば屋の看板をよく見かけますが、
今回はお店に入っての大休止はなしで走るお約束。
そうでないと、明るいうちに宿に着けるか
ちょっと微妙だからです。
また、峠越えの合間に
ドカッと休んでしまうと足が回らなくなるので、
停まるたびにちょっとずつパンなどかじりながら
距離と標高を稼いでいきます。
ちょっとブルベっぽいですね(笑)。
長野と岐阜の県境、長峰峠へ13時すぎに到着。標高は1350m。
峠の茶屋は閉まっていましたが、その軒先で
ご婦人がとうもろこしを並べていました。
なんでも、ご主人が他界される数年前までは
茶屋を開いてたとのことで、昔は乗馬ができたとか、
野麦峠の茶屋は立派すぎるとか、しばし
お話を聞かせていただきました。
旅の初日のラストボス、
野麦峠に続く飛騨街道へ入っていきます。
明確な看板が物語るとおり、比較的きれいに整備された
道がすらりと伸びていき、オートバイや自動車も
それなりに通るので秘境感はありません。
話は唐突ですが、今回は
フロントバッグ+小型バックパックに
荷物を収めました。
一眼レフカメラがなければ、フロントバッグに
二泊三日程度の荷物はぜんぶ収まるのですが……。
買ったばかりのドイターのバックパックは
容量わずか6リットル。上下の雨具を入れると
もう腹8分目といったところですが、おかげで
バックパックの総重量は1.5kgくらいなので、
快適に背負い続けることができました。
途中、小さな寺坂峠を乗り越しつつ、
「野麦」という地名の集落で一服。
飛騨の農村から信州へ働きに出かけたという
女工さんの哀史に思いを馳せる……
ふりをしつつの疲労回復です(笑)。
標高1500mに近づくと、
道は180度の折り返しが連続。
ぱっと視界が開けたなあと思ったら、
野麦峠。15時半着と順調な行程。
ここを越えれば再び長野県です。
「あゝ野麦峠」。標高1672m。
幾多の乙女が飛騨の故郷に別れを告げ、
涙ながらに信州へ下ったとか……
隣県に行くだけで、なにも泣かなくていいだろう!
と現代っ子の僕は思ってしまいますが、
鉄道やクルマや自転車さえもない時代は
国境の峠を越えていくというのは非日常的な
人生の節目だったんでしょうね。
近日中に、ちゃんと『あゝ野麦峠』を
読んでみたいと思います。
野麦峠を越えてしまえば、
宿を取った新奈川温泉までの20km弱は一気呵成。
同温泉に二軒しかないという宿のひとつに
17時前に到着。まずは順調に初日のサイクリングを終え……
ビール、ビール、ビール! なにはともあれビール!
夕食まで待つなんて絶対に耐えられず、
部屋でとりあえず乾杯。
Iさんもビール大好きです。
「大ビンですけどいいですか?」と、
夕食前に多すぎると思ったらしい女将さんの心配をよそに、
またたく間に2本が空っぽに。
荷物を減らす特効薬、
それは洗濯。着替えを最小限にするためです。
そうこうするうちに
夕食ができましたとお呼びがかかります。
飛騨牛に馬刺と、山国らしい食材の数々に
さらにビールが進んだことは言うまでもありません!
旅館の食事は、ぜんぶ酒のツマミみたいです。
★
次回予告!
お膳に林立する空っぽの大ビンたち。
すべてをお腹に収めた
二人のツーリストを待つ運命は?
そして日本道路最高所・標高2700mの
約束の地に二人は立つことができるのか?
次回、完結編をお楽しみに!